神戸市外大

学問として学ぶことは大事だけど、じぶんの目で見て、話を聞いて、ふれることで納得できる。

大城こなみ 外国語学部 国際関係学科 2012年度入学/2016年度卒業

国際関係学を学びたくて入学。

 国際関係学を学びたくて神戸市外大に入学しました。国際関係学というのは経済問題、政治問題、南北問題など世界を取り巻く問題の解決策を学ぶ学問です。
 小学校1年生からずっと英語が好きで勉強してきたのですが、高校生のころに“フェアトレード”という概念に出会いました。それからというもの、なぜ私たち先進国と発展途上国との間にはいろんな意味でこんなに大きな差があるのかと疑問に思ってきました。それが国際関係学科への入学につながっていると思います。

フェアトレードとの偶然の出会い。

 インターネットで見つけたカバンがたまたまフェアトレード認証商品でした。フェアトレードだからひかれたのではなく、単に可愛いと思ってひかれました。フェアトレードにおいては“可愛い”“美味しい”が入り口になることがとても大切だと思います。助けようという想いで購入すると支援になってしまうので、長くは続きません。商品の魅力で売れて行って市場ができて経済が回り、途上国が潤うサイクルができていくことが大切です。
 神戸市外大では入学後すぐにフェアトレードサークル「MANA」に入りました。サークルではフェアトレードのことを学び、世界の事例を知ることができました。啓蒙活動にも参加しました。例えば月1回学食に「MANA CAFE」という店を出してフェアトレード認証商品の販売をしました。学外のコミュニティとも積極的に関わりました。関東のいろんな大学の団体が参加する「まちチョコプロジェクト」という大きな美狮MGM官网を「MANA」でも立ち上げました。美狮MGM官网としてはフェアトレードのチョコレートのオリジナルパッケージを募集するもので、学内だけでなく地域も巻き込んで展開しました。

フェアトレードサークル「MANA」でフェアトレード認証商品を販売
(向かって左から3人目)

大学内の購買で販売したまちチョコ

まちチョコプロジェクトで募集したオリジナルパッケージ

フェアトレードのその先にイギリスがあった。

 高校生のときにフェアトレードという概念に出会い、その後も関心を持ち続けたのは「寄付やボランティアではなくモノを市場で売って経済を回しながらビジネスとして成立させて社会貢献をしている」と留学生いうモデルに興味があったからだと思います。
 フェアトレードが広く浸透しているイギリスへ留学したいという想いはずっとわたしの中にありました。でも、費用的な負担が大きいので他の国でのワーキングホリデーを検討していました。
 そんなとき、ゼミの先生から「学びたいことが明確にあるのなら、ワーキングホリデーじゃなくて留学すべきだ」と、背中を押してもらいました。

いきなりトラブル続出。

 3年生になり、休学して留学しました。イギリスへ旅立ったその日から、トラブルの連続でした。関空からオランダ経由でリーズへ向かったのですが、飛行機が遅れてトランジットに間に合わず1泊せざるをえなくなりました。翌日が入学式だったのでその日のうちにリーズに着きたかったんですが、リーズへの便が遅れていてスコットランドへ飛んでそこから電車に乗ってやっとのことでリーズに着いて、なんとか寮にたどり着きました。いまだから笑って言えますが、初日からこころが鍛えられました。
 留学生活がはじまって、まず困ったのはイギリス英語の難しさでした。アメリカやカナダの英語しか知らなかったので、独特の響きや単語のリズムに慣れるのに3ヶ月かかりました。たとえばゴミ箱という単語がわからなくて困ったこともあります。(イギリス英語ではbin)
 とにかく分からないことだらけだったので、ひたすらひとに頼りました。初日に大学の寮へ行くのに、道を行くひとにたずねまくりました。学部留学ですから勉強についていくのに必死で、授業中はわからない箇所を同じグループの学生に聞きまくりました。

リーズ大学

リーズの近くの港町、ウィットビーの風景

寮のフラットメイトとの写真

バレーボール部での集合写真(休みの日に)

いちばんは“リアル”を見ることができたこと。

 イギリスにはフェアトレード認証商品が普通にスーパーに並んでいて、価格もお手ごろでした。フェアトレード認証商品が当たり前に売られている一方で、それと矛盾するかのようにファストファッション(開発国でつくられていることが多い低価格商品)もよく目にします。「さあ、パーティーへ行こう!」となると、みんなはファストファッションで着飾って出かけていきます。

寮の近くのスーパーで販売されていたフェアトレード商品

 フェアトレードと言えばコーヒー、チョコレート、砂糖がその代表ですが、リーズの隣町のチョコレート工場を見学できたこともフェアトレードの理解を助けてくれました。フェアトレードを学問として学ぶことも大事だけど、じぶんの目で見る。現地のひとの話を聞く。実際の現場にふれることで腹落ちすることを実感しました。留学して良かったのは “リアル”を知ることができたことです。スーパー、チョコレート工場などでは、一般市民との理解にギャップを感じました。

リーズの隣町のチョコレート工場

帰国後、“まちづくり”に興味を持つ。

 帰国後、近藤楓さん(※)という同期の友人から聞かされていた「村?留学」のプログラムに参加しました。単純に面白そうだったので、日本の“限界集落”といわれる地域の状況をじぶんの目で見たいと思い、最終学年だし行ってみようと決意しました。
 集落の中で自給自足しているような小さなコミュニティを見てみたかったんです。行った先は京都の山奥です。そこで目の当たりにしたのは、その土地に根付いているお祭りのような伝統行事や昔からの食文化がいまにも消えてしまいそうな状況でした。
 こういうコミュニティだと、となりのオバちゃんから採れた紫蘇や猪の肉をもらったりして、それだけで生活できるんです。でも、そうやってずーっと受け継がれてきた食文化の伝統が、いま消えようとしていることは衝撃的でした。

※ 近藤 楓さん(HaMiDaSu特設サイト)
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「村?留学」のプログラムで訪れた村の風景

村の方との交流時の写真

村?留学生との集合写真

日本の中にも問題が顕在化していることに気づいた。

 「村?留学」プロジェクトに参加して感じたのは、受け継がれてきた伝統や文化の良さが、外のひとはもちろん住んでいるひとにすら伝わっていない。だから、大切なものが失われていく。
 解決しなければと思うことが日本にも多くあることに気づかされました。

「村?留学」プロジェクトで参加した村で開催されるお祭り「花笠踊り」

けっきょく向こう側が見えていない。

 イギリスでフェアトレードの現実にふれて疑問に思ったのは「ものをつくるひとと買うひとの距離が遠い」「つくっているひとの顔が見えない」ことでした。市内で何か所もマーケットが開かれていましたが、それでもつくっている側のひとは見えていません。フェアトレードの根っこには、“見えていない”という要因があると感じていました。生産の現場が見えない。だから、想像できない。だから、問題が起きる。結局、そういうことです。そこは限界集落の問題とも似ています。

外大入学時のイメージとは大きく離れていった。

 入学したときには将来は商社かどこかで英語バリバリの仕事をしているイメージでした。ところが、その土地ならではの文化を少しでも多く残していきたいと思い、“まちづくり”に興味を持ちました。
 限界集落のひと同士は互いを知っています。全員が全員の歴史を語れるような関係です。みんなが温厚で助け合わないと生きていけないんです。そんなコミュニティが消えようとしている…。
 自宅のある大阪や大学のある神戸に帰ったとき、集落を想うと寂しくて切なくなるじぶんがいました。

向こう側が見えない。

 ふつうは商品をつくるひとは見えないものですが、問題があったときは、向こう側が見えないと解決しません。他国との間だけでなく自国内でも同じことが言えます。限界集落では農業が主体ですが、重労働なわりに生産者は商品の価格を決められない。見栄えやニーズなど市場の要求に合わないものは捨てられます。それが現実です。だから市場の原理で伝統的な食文化も消えていきます。

食を通じたまちづくりで、「間をつなぐ存在」になりたい。

 現在は食を通じたまちづくりの会社にいます。飲食店、こだわり生産者を集めるマーケット美狮MGM官网の運営に携わってきました。いまは、廃校の活用で地域課題を解決するプロジェクトを担当しています。
 じぶん自身が「モノをつくる生産者と市場でそれを買い求めるひとの間を繋ぐような存在」になりたいと考えています。じぶんの足を動かしてリスクを取り除き、ビジネスとして成り立たせながら地域の魅力を発信するノウハウを学んでいるところです。

産地と消費者をつなぐマーケット美狮MGM官网の様子

御幸森小学校という廃校を活用したプロジェクトで開催した多文化クロッシングフェス

“まわりよりも1年遅れる”ことを恐れないで。

 大学時代の経験はほんとうに貴重です。部活もサークルもアルバイトもすべてが繋がっています。休学中の経験がわたしの生き方にいちばんの影響を与えました。世界を知ることで日本に目が向きました。まわりよりも1年遅れるという感覚になることもあるでしょうが、焦らずじぶんのペースでじぶんが納得できる生き方を見つけてください。そういう意味で休学という選択肢を持つことは良いことだと思います。
 じぶんのこころが動く方へ、恐れずに向かってください。

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